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CREATOR INTERVIEW VOL.12

大切なのは、より良いものが生まれる場のデザイン。 数年先を見据えながら取り組むモノづくり【前編】

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株式会社イメージソース

カンヌ広告祭をはじめ、様々なアワードで受賞歴のあるイメージソース。彼らが積極的なR&D(自社開発)に取り組む理由とは。

1998年の設立以来、常にデザインとテクノロジーの可能性を追求し続けてきた株式会社イメージソース。これまでにカンヌ広告祭、One Show、D&AD Awards、ADFEST、Spikes Asiaといった様々なアワードで受賞実績のあるイメージソースであるが、2017年には株式会社D2Cと資本提携を果たし、NTTグループの技術を活用したデジタルクリエイションの取り組みを強化していく。そんな同社には、純粋にモノづくりを優先し、追求し、研究・開発(R&D)を進めるチームがある。そこで今回、R&Dを推進するメンバーの皆さんにチーム誕生の秘話や事例、そしてR&Dの必要性について伺った。


肩書きに捉われずに立ち回るデジタルインスタレーションの現場

2016年9月に新設された、R&Dを推進するチーム「クリエイティブラボ」。イメージソースにて取締役/アートディレクターを務める藤牧篤氏がリーダーとなり、集まったのはもともと営業職、プロダクトデザイン、はたまた紙出身と様々なバックグラウンドを持ったメンバーである。

種村:僕はアシスタントディレクターをしていて、Webから最新のテクノロジーを使用したインスタレーション案件まで幅広く担当させてもらっています。学生時代はロンドンの美術大学に留学をして、グラフィックデザインを専攻していたのですが、そこで紙媒体だけでなく、映像やインタラクティブな作品もつくっていました。その経緯からデジタルなコンテンツに興味を持つようになり、特にインスタレーションの分野に最初期から制作に取り組んでいたイメージソースに入社することを決めました。

吉井:エンジニア兼テクニカル・ディレクターをしていますが、前職では営業でした。そのあとに専門学校へ通い、インスタレーションをやりたくてイメージソースに入りました。最初はWeb案件ばかりやっていたのですが、ここ最近は主にインスタレーションに集中しています。

加藤:現在はディレクターをしています。私自身、イメージソースに入社するまで、家具、家電のデザイン設計、イベント・展示会の企画デザイン、CG、映像制作など、クリエイターとして幅広く活動してきました。私がイメージソースに入社したきっかけは、独自の視点でデジタル施策を多くプロデュースしていきたいと考えたからです。

宮崎:私はデザイナーをやっておりますが、もともとは地元である四国で紙のデザインをやっていました。そして上京してきたのですが、イメージソースも参画しているワークショップに参加したことがキッカケで、「デジタル作品をつくるのは面白いな」と感じて入社しました。

大塚:僕もデザイナーです。入社当初は主に、Webのデザインをしていましが、最近では、イベントのデジタルインスタレーションのデザインを担当することが多いです。イメージソースでは、様々なデジタルコンテンツのデザイン業務に関われることに魅力を感じて入社しました。

分業ではなく、協業でつくり上げていく。TDW2015で出展した3Dドローイング作品。

大塚さんはデザイナーでありながら過去にはゲームエンジンである「Unity」を使うこともあったという。デザイナーとエンジニアの分業ではなく、協業することでつくり上げていくーー言葉にすれば簡単なことのように聞こえるが、現場では手探りの連続であった。

大塚:2015年のTokyo Design Weekに出展した作品では、完全な分業ではなく、デザイナーとエンジニアがお互い使っているツールを理解し合い、歩み寄る形で制作しました。そのとき、僕は初めてUnityを使ったんです。

デザイナー 大塚 和也さん
デザイナー 大塚 和也さん

大塚:この作品はモーションキャプチャを使い、3D空間上に絵が描けるというものなのですが、モーションキャプチャのシステム自体が初めてで、わからないことがすごく多かったんですね。デザイナーとして体験をどうデザインしていくか、ずっと手探り状態が続いていました。そこでエンジニアがどういうシステム使って、どういうことを目標としているのかをまず汲み取り、実際に僕自身がUnityを使うなど、協業してデザインを仕上げていくというアプローチを取りました。もはやPhotoshopやIllustratorを使うだけがデザイナーの仕事ではなくなってきているなか、イメージソースではR&Dを通じて、自分のやりたいと思うことがあれば仕事の幅を広げられる環境にあるんですよね。はじめはどうアプローチすればよいかわからなかったのですが、自分自身の可能性を広げる意味でも、協業というアプローチを取ったことは非常によかったなと思います。

そしてデザイナーとエンジニアが歩み寄ることで完成したのが、「3D GRAFFITI」という作品だ。当時のVRコンテンツとしては珍しい、「みんなで楽しめる」ということをUXの設計をする上で大切にしたという。

3D GRAFFITI
3D GRAFFITI

大塚:動画を見ていただくとわかるのですが、アーティストの方がiPadを持ちながら、実空間に絵を描いています。3D空間を用意し、iPad越しにその空間を見ることができるようにしています。自分のストロークと3D空間の動きにこだわり、本当にその場に描いているという体験を追求しました。

吉井:本作品の設計思想としては、「閉ざされた空間ではなく、開けた空間で、みんなで楽しめること」を大切にしています。当時は、今ほどヘッドマウントディスプレイが普及していない時期でしたが、今後、VRドローイングアプリがどんどん出てくるだろうと予想していました。そして、一人しか体験できない閉じたものにしたくなかったので、意図して、ヘッドマウントディスプレイを使わないものになっています。

大塚:この空間全体をキャンバスとして、iPadを持ちながら複数人と対話しながら描けるようにしたかったんです。個人ではなく大勢の方を対象としたことで、システムの説明には少し苦労しました。体験する一般の方に対してただiPadを渡してもどう使えばいいかわからないわけです。実演してみせたり、チュートリアルの映像を制作したりして、いかに体験者に分かりやすく説明するか、というのが工夫したポイントです。

クリエイティブラボチーム誕生の裏にあった「R&Dのジレンマ」

R&Dを推進する「クリエイティブラボ」チーム発足の前から、イメージソースでは “オープンラボ” と呼ばれるR&Dの活動や外部への作品発表に積極的に取り組んでいた。そしてR&Dからクライアントワークに繋がった取り組みも多数生まれている。その1つが、日産やJRAのイベントで起用された360°撮影システムだ。

吉井:R&D自体はこのクリエイティブラボのチームが発足する前から、自分たちのアイデアを外に出していく取り組みとして行われていました。そこからクライアントワークに繋がったものも、いくつか生まれています。

Photo Circuit
Photo Circuit

藤牧:例えば、「Photo Circuit」と呼ばれる撮影システムは、日産自動車のギャラリーに展示した次世代カーセルフィー「CUBE SHUTTER ROOM」でも起用されています。もともと六本木アートナイトで発表した作品をベースとしており、クライアントワークに繋がった例です。

CUBE SHUTTER ROOM
CUBE SHUTTER ROOM

オープンラボによってR&Dの取り組みがクライアントワークに繋がる流れができていた一方、現場では悩ましい点もあった。

吉井:オープンラボの意義はみな理解していたと思いますが、現場側の理想と現実のズレや、クライアントワークとの兼ね合いなど、R&Dへの取り組みのサイクルが徐々にうまく機能しなくなってきていました。

種村:オープンラボの当初のコンセプトは、「自分たちが本当に面白いと思える、作りたいものをつくっていこう」という考え方でした。しかし、段々と「つくらなくてはいけない」というプレッシャーが生まれてきてしまって。当初の能動的な空気が、いつの間にか受動的な空気感に変わってきてしまったんです。

藤牧:だけども、みんな「モノづくりをしたい」というモチベーションはとても高かったと思います。そのため、なかなかR&Dが取り組めない状況を変える必要があり、今まで曖昧だった推進役を「チーム」という形にして集まったのがクリエイティブラボでした。

取締役/アートディレクター 藤牧 篤さん
取締役/アートディレクター 藤牧 篤さん

藤牧:そしてクリエイティブラボでは、R&Dだけではなく、さらに広い視点で「より良いものが生まれる場のデザイン」が必要だと感じ、幅広く取り組んでいます。イメージソースを、さらにより良いものを生み出すための環境や組織にしていくために、このチームが担うべき大きなミッションの一つだと思っています。

将来的な案件を「創造」しながら。R&Dは数年先を見据えた地盤づくり

クリエイティブラボ発足から最初の半年は、R&Dの取り組み自体よりも「R&Dのための土台づくり」であった。しかし、積極的に話し合う機会を生まれたことで、クライアントワークにも好影響が生まれてくる。

種村:チームができてからの最初の半年は、R&Dを行うための土台づくりに重心を置きました。藤牧さんの言う「より良いものが生まれる場のデザイン」を、このメンバーで積極的に話し合えたのは非常によかったです。積極的に情報共有していく雰囲気になり、R&Dのための時間と環境をどうつくっていくかをしっかりと話し合えたのは、イメージソース全体としても価値があったなと思います。結果的にはクライアントワークに対しても大きなフィードバックがあり、自分たちの価値を高めていく流れになってきているなと。

アシスタントディレクター 種村 博善さん
アシスタントディレクター 種村 博善さん

「より良いものが生まれる場のデザイン」を実現させるために、クリエイティブラボチームは、はじめから無理やり案件に紐付けることもなく、直接利益に繋げるのは数年先というスタンスだ。

加藤:どこの組織も、新しいクリエイティブを生み出すということは常に意識していると思います。しかし、イメ―ジソースのクリエイティブラボのアプローチは「クライアントワークを越えた活動」なので、はじめから強引に案件に紐付けるということはやっていません。後々、そこで行った思考実験が案件にいきていくというスタンスです。ですので、日々の業務に追われながらも、R&Dに取り組める時間があることで、自分自身のモチベーションを高く保ち続けることができています。

吉井:イメージソースがクリエイティブラボのような取り組みを行うのは、良い意味で「危機感」を抱いているからこそだと思います。R&D以外のことも含め、今までのやり方にとらわれずに、「より良いものが生まれる場」をあらためて見直そうとしています。R&Dも直接利益に繋がってくるのは数年先になるかもしれません。それでも、プロトタイプをつくり続けることが大事だと思っています。いま行っているのは「地盤づくり」に近くて、数年先も見据えて、持続可能なより良いものが生まれるサイクルを模索しています。

後編に続く


取材を終えて

「より良いものが生まれる場のデザイン」という言葉が印象的なインタビュー。目先の利益を追求せず、純粋にモノづくりを楽しむ環境がイメージソースにあった。数年後、どのようなクリエイティブが世の中に生み出されるのか、今後のイメージソースの活躍に目が離せない。そして後編では、イメージソースの企業文化やクリエイティブラボのメンバーの今後の展望に迫っていく。
取材・文:永田 優介 撮影:川島 勇輝