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CREATOR INTERVIEW VOL.16

デザイナーの未来を拓く力「コーディネーション」が技術と人の架け橋をつくる

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株式会社スタートトゥデイテクノロジーズ

グループの技術領域を一手に担う先端企業。
未来のデザイナーは技術と人の架け橋になる。

スタートトゥデイテクノロジーズは、スタートトゥデイグループのサービス運用・事業開発・技術研究を一手に担うファッションテック企業です。ミッションに「70億人のファッションを技術の力で変えていく」と掲げていますが、技術者や研究者が取り組む開発・研究内容を人に橋渡しするキーパーソンとして、デザイナーが重要な鍵を握っています。デザインが未来で果たす役割を先取りしているというスタートトゥデイテクノロジーズのデザイナーは、一体、どのようなスキルや観点を身につけているのでしょうか? 代表取締役CIO(Chief Innovation Officer)の金山裕樹氏とデザイナーの坂本恭子氏に尋ねました。


ユーザー1100万人にサービスを提供する、デザイナーと技術者・研究者の二人三脚

2018年4月1日、スタートトゥデイグループの株式会社スタートトゥデイ工務店、株式会社VASILY、株式会社カラクルという3社が合併し、新会社スタートトゥデイテクノロジーズは設立した。約200名の社員のうち8割が技術開発・研究を担うエンジニアのなか、残り2割にあたるのデザイナー達にはどんな役割を期待しているのだろう。

金山:スタートトゥデイテクノロジーズでは、ファッションショッピングサイト「ZOZOTOWN」の開発やユーザー数1100万人が利用するファッションコーディネートサイト「WEAR」、ファッションコーディネートの閲覧・作成・購入ができるアプリ「IQON」といったサービス運用をしています。加えて、私がプロジェクトリーダーを務めるファッションテックに関する研究開発を行う「スタートトゥデイ研究所」で、「ファッションを数値化する」というミッションを達成すべく先端技術の研究や事業運営に取りんでいます。

私たちの目標は世界中の人々をファッションで笑顔にすることです。服を購入する、着用するという行為は誰にでもありますけれど、人間の三大欲求が関係する種の繁栄や存続にとっては、ファッションは必ずしも必要とされるものではないため、ただ着用するだけでは快楽を感じる回路が刺激されません。そのために、寒さをしのげて裸を隠せる服であれば満足という人は少なくなく、そんな現状を変えることはできないかと考えています。服を着るという日常の営みを通じて、人を楽しくしたり、気持ち良くしたりすることができたら、とても素敵なことですよね? 人の個性が表現されるファッションの魅力を広めた先に、世界中で多様な文化を認め合えている未来を思い描いて、私たちの強みである技術を活かした事業に取り組んでいきます。

代表取締役CIO 金山裕樹氏
代表取締役CIO 金山裕樹氏

そんなスタートトゥデイテクノロジーズですが、技術だけでは価値がほとんどないとも思っています。技術を、人が手にとって使えるようにして、はじめて技術が価値を持つからだと考えているからです。たとえば、自動車に積む、これまでにないくらいの高出力エンジンが開発されたとしても、それをデザインせずに車に搭載してしまい、アクセルを踏んだ時に車が壊れてしまうようなことがあっては元も子もありません。だからこそ、技術者や研究者が生み出す先端技術には人との架け橋をつくるデザインが必要なんです。スタートトゥデイテクノロジーズでは、技術者や研究者とデザイナーが手を取り合って協力する風土を大切にしています。

デザイナーは、人の課題や欲求を解決する時に全体を設計し、その中でテクノロジーがどうあるべきかを議論する中心になる存在だと考えています。グラフィックやUIを一つの手段として、どうすれば人の手元でテクノロジーを活用していけるようにできるのか、あるいは、人の課題や欲求はどのようにテクノロジーで解決していけるのか。デザイナーは、この両方の観点で架け橋を具体化するようなクリエイティブを担うんです。

坂本:デザイナーとしての意思決定やアウトプットが、直接サービスに作用し、ユーザーから声を聞けることにやりがいを感じます。デザイナーの一員として、新規開発するサービスの仕組み自体を考えることから携わることができるんです。デザイナーには、それくらい大きな裁量を与えられていて、技術者や研究者と対等にコミュニケーションを取ることができます。

金山:私が新規事業開発の責任者をしているので、スピーディーに研究・開発を進めていくようにしています。たとえば、大企業では見られがちな稟議や承認に時間をかける必要はなく、会議や打ち合わせのようなディスカッションの場で、「それ、やろうよ」と決めていく軽快さは大事です 。

デザイン領域をクライアントワークから自社サービスに移した苦労とやりがいの成長譚

そもそも、制作会社のデザイナーとしてキャリアをスタートした坂本氏は、どんなふうに働いて、スタートトゥデイグループの自社サービスをデザインできるようになったのだろうか。

坂本:元々はデザイン事務所に所属して、クライアントワークや広告のデザイン案件を多く担当してきました。そのような受託制作を担っていく中で、納期のスパンが短いことやクライアントとの関係性が提案段階で終わってしまうことなどを経験して、消耗しちゃったんです。もう少し、世の中の役に立つようなものづくりをしたい。誰のためにつくっているのか明瞭なデザインをしたい。いくつかの企業経験を積む中で、そう感じていき、次のキャリアパスは自社サービスを開発・運用している会社に入ろうと思いました。

VASILYを志望した理由は二つあります。一つ目は、提供するサービスのテーマです。私はファッションが好きで、ファッション関連で新しいサービスを提供できる企業に入社したいと思っていました。かといってファッションを扱っていればどこでもよかったわけではないんですね。きちんと技術的なチャレンジをしている企業かどうか。デザインだけではアウトプットできることに制限を感じていたので、そのようなもう一つの理由をふまえて企業を選びました。

実際に自社サービスのデザインに携わると、思っていたよりも苦労のほうが多かったんです。クライアントワークや広告制作と比較して、何のために働くのかということと向き合う気持ちというか、スタンスの面が異なりました。ユーザーの気持ちに、より真剣に、より親身になって、たくさん共感してデザインしないといけないことがわかりました。デザインがダメだった時には、ユーザーからダイレクトに声が届くので、自社サービスをデザインすることはチャレンジングな仕事だとも実感していきました。誰のためにつくっているのか明瞭なところにやりがいを感じていますし、いわゆる「見た目だけのデザイン」ではないことに手を動かせるのはスキルを磨く上で楽しいことです。

デザイナー 坂本恭子氏
デザイナー 坂本恭子氏

金山:デザイナーは感性も大事ですが、坂本の場合、それを感覚的なままにせず、言語化して、コミュニケーションを取る力が身についていきました。デザインする上で意図を踏まえて、各工程を説明することができたり、どんな施策を打ち、その結果どんな成果が得られたのか、成功も失敗もきちんと要因を解明することができたりすると、ノウハウを貯めていくことに繋がります。

そのようにして、徐々に再現可能な状態として取り扱っていけるデザインを増やしていくことが大事。言語化することに秀でていくと、職種をまたいで活発な議論をすることができますし、狙ったところにちゃんとボールを蹴り込むことができます。それはビジネスにとって重要です。デザインはアートではなくビジネスなんですよね。

坂本:私も最初からコミュニケーションできていたわけではありません。デザイン事務所でキャリアをスタートして、いくつかの企業に転職していきながら、さまざまなクライアントワークや広告制作を担当する中で、徐々に言語化できるようになっていきました。デザイン事務所で働いている多くのデザイナーと同じように、私自身も、クライアントワークや広告制作を通じて、お取引先の先を見据えてデザインしてきたことが言語化やコミュニケーションのスキルを身に付けることに役立ちました。

コミュニケーションを取る上で大事にしていることは相手の立場になって考えることです。同じデザイナー同士であれば、ある程度、共通言語というものがありますけど、エンジニアやディレクターのような異業種の人たちとも議論を積み重ねていくために、相手に合わせて言語化することを心がけるようになりました。

そのような経験をして、スタートトゥデイテクノロジーズでは、新事業創造部に所属しています。2018年4月時点では、新しいサービスを生み出すプロダクトオーナーとして、ディレクターと2名体制のチームを組み、どんなユーザーに何をサービスとして届けるのかを準備する仕事に取り組んでいます。まずは、新規事業として開発していくことになるサービスの対象ユーザーをインタビューすることから始めました。

金山:VASILYというスタートアップだった頃は、時間的にカツカツで、ユーザーインタビューやユースケースの検証に余裕を持って取り組むことができませんでした。カスタマージャーニーを明瞭に描かないままキックオフして、パワープレイで開発してきた面もあります。スタートトゥデイテクノロジーズになり、VASILY時代のそのような性格を反省して、手を動かす前のストーリーづくりに時間をかけるようになりました。

例えば以前なら3日間で固めてしまっていたカスタマージャーニーを、3ヶ月くらいかけて準備することで、最終的にサービスのクオリティをもっと高めていきたいんです。クオリティの高さは、調査・検証してきた事柄の量に比例すると思っています。仮にこのような取り組みが成果にうまく繋がらなかったとしても、得られる結果はとても大きな価値を持つと予感しています。

スタートトゥデイテクノロジーズが考える、デザイナーの未来に必要な力「コーディネーション」

坂本氏のように、言語化とコミュニケーションに秀でたデザイナーが活躍するスタートトゥデイテクノロジーズは、ビッグデータやディープラーニングといった人工知能関連の先端技術にも向き合う。その中で、デザイナーが未来で担うべき職域を発見することができているという。

金山:以前、とある世界水準の企業のUI/UX担当者と話した際に、ECサイトに掲載されているバナー広告を人工知能によってデザインしているというエピソードを聞きました。その時に、坂本も言っていた「見た目だけのデザイン」は、もう人の仕事ではなくなることを感じました。その企業では、デザインするバナーの目的に合わせて、人工知能がビッグデータから適したバナーデザインを判断して制作しています。そんな時代が標準になった時に、デザイナーは何を設計することができるのか。人工知能を駆使して、最終的にテクノロジーをユーザーにどうやって届けるのかを考えることは、人にしかできません。技術と人の間に架け橋をつくる「コーディネーション」は、未来のデザイナーが担っていく広義の意味でのデザインを育てていくと思います。

坂本:私自身、そのような状況が訪れていることを実感して入社した……と言えたらカッコイイんですけど、実際のところはそんなことを思いもしていませんでした(笑)。

金山:あはは。でも、デザイナーの仕事が切り替わるのって、本当に一瞬のことだと思うんです。以前、T型フォードが生産される前後10年のニューヨークを撮影した写真を見たことがあるんですが、10年前は街中を走る馬車が撮られていたのに、T型フォードが流通するとそれらが自動車に一変してしまっていました。それくらいイノベーションの影響で時代が変化するスピードは早いです。

坂本:ただ、デザイナーの未来について詳しく知らなかった私でも、働く中でたくさんのことを学ぶことはできています。それによって、ずっとデザイナーとして働いていく上で重要な、大きな価値を得られているとも思います。

金山:でも、スタートトゥデイテクノロジーズでは、「デザイナーってこうあるべき」みたいなことは決まっていないよね? 社員それぞれの個性に合わせて、成長していけるような企業でありたいと思っています。

坂本:もしもスタートトゥデイテクノロジーズに新しい仲間が入社した時は、デザイナーとして少しずつできることを増やしていく過程に寄り添っていきたいです。たとえば、ずっとグラフィックをデザインしてきた人がUIデザインにチャレンジしたいなら、そのサポートをしたいし、逆にUIデザインをしてきた人が改めてグラフィックのスキルを高めたいのであれば、そういう気持ちにも協力していきたいんです。私自身、デザイン事務所出身なので、気持ちがわかりますから。

金山:社内には、バナー1本にしても、レビューをしあう仕組みも用意しています。なぜ、このバナーにしたのか、どのくらいの目標値を定めて、結果はどうだったのか。そして、どうやって改善していけそうか。私自身も全部見ているのは、一緒に成長していきたいからです。そして、ゆくゆくはマーケティング的な視点を持って、デザインでビジネスをしていける力も身につけていけるといいですよね。

坂本:私自身も、これまでは既存サービスの運用・改善に携わってきたので、新事業創造部でサービスの立ち上げを担当するという新しい経験にワクワクしています。自分のデザインでサービスを産んで、ユーザーからどんな声が届くのか、リリース以降が楽しみです。

金山:スタートトゥデイテクノロジーズは、2018年4月1日に設立したばかりの新会社です。だから、坂本をはじめ、社員が5年、10年とデザインに携わっていく未来が、会社の未来像をつくっていきます。自分の働く姿が会社をつくり、ユーザー数1100万人規模のサービスを通じて、社会に文化を残していくこともできる。デザイナー自身が形にしなければ、それがなかった世界をある世界へと変えていけるんです。デザインしたものが、そのまま歴史を残すことにもつながるような企業として、インターネット上に新しい地図を残していくために、スタートトゥデイテクノロジーズは技術者や研究者とデザイナーが手を取り合って、さらに躍進していきます。


取材を終えて

お二人は、少数精鋭で働いてきたからこそ、現場で手を動かすことの働きがいや喜びを踏まえたうえで、デザイナーの未来を見据えることができるバランスを保っていられるんだろうと感じました。デザイナーをはじめ、デジタルクリエイティブの関連職が将来像をイメージする時に避けては通れない、テクノロジーとイノベーションによる影響を、ポジティブに捉えて、新しい風を吹かせていけるのは、スタートトゥデイテクノロジーズが隠し持っている“人柄”のような付加価値です。そんな企業だからこそ、社員一人ひとりの経験を重んじながら、ユーザー数1100万人規模のサービスを通じて、社員も世界中の人も幸せにする事業を創造していけるのでしょう。
取材・文:新井作文店 撮影:鈴木愛子