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CREATOR INTERVIEW VOL.7

全員でクライアントと向き合い 事業にコミットする

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VML TOKYO

日本のデジタルマーケティングを牽引するVMLは、どのように
結果を出し続けているのか。その戦略からクリエイティブまでに迫る。

世界最大の広告代理店WPPとWPPグループのデジタルエージェンシーVMLが日本法人として設立したVML TOKYO。(以下VML)従来のWeb制作会社や広告代理店には属さない、 新しいデジタルコミュニケーションに特化した少数精鋭のエージェンシーだ。 クライアントのブランド戦略の根本から携わり、 海外の先進テクノロジーやマーケティング手法を取り入れ、戦略からクリエイティブまでのデジタルマーケティングソリューションを提供している。高い専門性が求められるVMLとはどのようなチームだろうか。今回は、プロデューサーの大脇さん、飯島さん、デザイナーの藤井さん、クリエイティブディレクターの大石橋さんに話を聞いた。


日本を牽引するデジタルマーケティング集団

ad:tech tokyo2015」にてVML代表である荻野氏がWPPグループCDOのスコット・スピリット氏と、資生堂ジャパンCMOの音部氏を交えてオープニングキーノートに登壇するなど、少人数ながら、日本のデジタルマーケティングを牽引している。

大脇:現在、世界15ヶ国25都市に拠点があるので、「中国の動向はどうか」とか、「NYのトレンドは?」というような海外の情報は取りに行きやすいですね。最近は、海外進出を狙う日本企業の案件も多数いただいており、VMLネットワークが役に立ちます。外資企業の日本進出案件もお話をいただきますし、日系外資問わず、多岐にわたるクライアントと、グローバルな視点で仕事ができています。

日本はマーケティング後進国と言われているが、スマホ、SNS、といった増加するチャネルに伴い、デジタルマーケティングの担う役割は年々高まっている。設立から3年ながら、大手グローバル企業の案件を多数手がけ、間違いなく国内のデジタルマーケティングの中核を担っているVML。実際には、どのようにクライアントと接しているのだろうか。

シニア・プロデューサー 大脇香菜さん
シニア・プロデューサー 大脇香菜さん

大脇:デジタルを用いて事業の成長戦略を描く際、そもそも何を成長と呼ぶかというプランニングから携わっていますね。VMLは定量・定性調査に基づく徹底的に練りこまれた戦略のもと、クリエイティブまでを提案しています。戦略を作る上で大事にしているのは、リサーチに基づくカスタマージャーニーの設計です。生活者のインサイトを見つけ出し、コミュニケーションプランを立てています。そこからとても大切にしているのは、クリエイティブの提案。その精度には自信を持っているんです。戦略がクリエイティブを通じてハマったときはとても嬉しいですし、そこに我々の価値をクライアントへご提供できていると感じています。

飯島:大脇はクライアントの悩みを翻訳する能力が圧倒的に高い。クライアントも気付いていないような課題までを察知し、最適な戦略に落としこむ。だけどこれは大脇にしかできない成功ではなくて、フレームワークに基づいて体系化しているので、今後全員が再現可能な成功としてVMLに蓄積されています。そこに「プロデューサーだから」「デザイナーだから」という垣根はありません。私は元々デザイナー出身なのですが、VMLはどのポジションのメンバーでも戦略とクリエイティブに対する理解が深いと感じています。

マーケティングや戦略と聞くと、プロデューサーやプランナーの領域という印象があるが、VMLはそうではない。デザイナーの藤井さんも、マーケティングとの密接な結びつきのもとでデザインのアウトプットを行っている。

藤井:論理的なクリエイティブブリーフがあがってくるので、マーケティングの知識は自ずと付きました。要件定義が定まった状態でデザインにとりかかるので非常にやりやすいです。戦略はガチガチに作りこみますが、表現手法に制約を設けられることはまったくないので、自由にデザインできることもやりがいに感じています。最新のマーケティングの観点を反映したデザインを追求でき、満足しています。

クライアントと直に接することで、満足度が高いクリエイティブを提供できる

藤井さんは、デザイナーとしては珍しく単独でクライアント先に訪問することもあるという。企業のブランド担当者とデザイナーが直接コミュニケーションを取り制作に活かすというのは、直案件のエージェンシーとしても珍しいのではないだろうか。

飯島:VMLが目指しているのはクライアントにとって最適なクリエイティブの提供。だからこの形を取っています。制作会社の場合、クライアントと対面するのは基本的にフロントの営業だけというケースが多い。だからデザインの追加要望を相談されても、「納期を確認します」、「見積もりを出します」といった返答しかできず、そもそも追加要望が顧客にとって必要か、どうあるべきか、という本質的な議論ができません。

藤井:デザイナーが直接相談を受ければ話が早い。VMLではそれができるし、クライアントの声をダイレクトに反映できるのは、かなりやりがいがあります。継続的にクライアントとの接点を持ち続けるので、信頼関係も築きやすい。だけど、やってることは結構地道で、分かりやすく例えるなら町医者だと思ってるんです。クライアントから直接悩みを聞き、デザインというカタチで処方箋を渡しているのかなと。かかりつけの町医者には、世間話もできるし、検査するほどじゃないけど最近ここが痛い、みたいな相談もできますよね。デザインの悩みって実は簡単に修正できることも多いので、直接話すことで、よりクライアントの満足度が高いクリエイティブを提供できると思っています。

デザイナー 藤井 学さん
デザイナー 藤井 学さん

クライアントの満足は結果を出すことにあり、結果を出すためにはコンシューマーを満足させることが求められる。

藤井:私はデジタルにおいては、とにかくクリエイティブは早く世に出すべきだと考えているんです。作ったデザインの承認作業に時間がかかり、世に出るのが一ヶ月先だったり、ときには世に出せないこともありますよね。必要とする人にもっと早く届けたいし、人の役に立つためにも、世に出して結果を見ながら軌道修正していけばいい。すぐに変えられるのがデジタルの良さでもあります。

大脇:入念に作りこんだクリエイティブだとしても、公開後のコンシューマーの反応をみながら改善点が見つかったらすぐ改修します。いくらいいと思っても、コンシューマーの心を動かせなかったら意味がありません。クライアントやコンシューマーの満足に近づいて行けるというのは、デジタルマーケティングにおけるクリエイティブの醍醐味。プロデューサーもデザイナーも全員がライブ感を持って仕事をしています。

飯島:デジタルマーケティングにおいて、面白いなと思うのは、クリエイティブの正解が丸裸になるところです。従来のクリエイターは、クリエイティブの良し悪しを自分や誰かの主観で判断するしかなかった。でもデジタルでは、どれだけ見られたか、どれだけクリックされたかが数字として即座に分かります。だから、正解に向けて改善改良を繰り返せる。

大脇:例えばバナーひとつでも、結果がどうだったというのはきちんと報告するようにしているね。結果のフィードバックをもらうことで、私達もクライアントに対しても、次の機会でその学びがすぐに活かせるというメリットがあるけど、デザイナーとしてはどう?

藤井:自分の成果物がどうだったのか、やっぱり知りたいし、バナーなどは出稿して終わりがちだから、成果の報告が貰えるのは嬉しいね。クライアントと直で接する分、結果が伴ったときの喜びは大きい。小さな制作物でも、こなす作業にならずに結果に興味を持ち続けられるのは、クライアントにとって何が大事かという視点でいるからだと思う。

どんな意見もフラットに言い合えるのは、お互いの仕事へのリスペクトがあるから

エージェンシーにはそれぞれが自己の領域のみを分業するイメージがあるが、VMLのカラーは全く異なる。各自がスタンドアローンで動けるにも関わらず、強いチームワークで結びついている。その根底にあるのはお互いへのリスペクトだ。

大石橋:先にクライアントのゴールイメージがあり、そこに向かってベストな布陣を組むので、案件メンバーは毎回違います。ゴールイメージが固まったら、それぞれのバックボーンや得意領域から自然にメンバーが決まっていきますね。

プロデューサー 飯島 悠介さん
プロデューサー 飯島 悠介さん

飯島:ゴールイメージがカチッとハマるまでは、社員全員でブレストすることも。だから、全員が案件を把握しているし、実際の案件のメンバーには入らなくても相談に乗ったりします。社内でディスカッションが突然始まることも多いけれど、いつもダラダラ喋っていることはなくて、メリハリがある。みんなで集まってワーッと喋って、そのあと真剣に机に向かうみたいな。

大石橋:全員の役割や動きが分かって、相談もできるから心強いですね。僕はクリエイティブ側から見ているけど、じゃあマーケティングの観点で見たときにゴールと乖離していないか?と都度確認でき軌道修正できます。

大脇:VMLの根底にあるのはメンバー同士のリスペクトです。得意領域は違っても、各々の仕事をリスペクトし、信頼しています。だから常に健全なディスカッションが出来る。意見が違えば納得いくまで話し合いますが、意見が違うからといって、否定をしたりはしません。だからこそ、みんな正直にクライアントのビジネスに集中できていると思います。

クリエイティブディレクター 大石橋 智さん
クリエイティブディレクター 大石橋 智さん

大石橋:みんなそれぞれの正義と根拠を持った上での意見だとわかっているからね。適当な意見をいう人は誰もいないので、意見はしっかり聞くし、互いに納得できるまでディスカッションしていますね。クライアントを説得するより、社内を納得させる方が時には難しいこともある。でもだからこそ、自分が絶対に正しいといった独善的な感覚には陥らないし、健全な状態だと思います。

互いをリスペクトしあうのは、高い専門性を誇るメンバーが揃っているからではない。未経験で入社した23歳のディレクターに対しても、同じだという。

大脇:彼の分析力やリサーチの視点を非常に尊敬していて、戦略に対する意見も取り入れています。クライアントと真剣にビジネスをする上で、社歴や年齢だけが必ずしも大切だとは考えていません。

飯島:単純に20代前半の彼のほうが、案件のペルソナに近いこともある。若い世代がどうデジタルコンテンツに接しているかって、想像と全く違うんですよね。マーケターの感覚は経験を積むほどにどうしてもバイアスが入ってしまう。彼の意見を聞くことで、凝り固まっていたなと気付かされたりもします。

本質的な価値を生みだすことに集中できる環境

不要なフローや体制にはこだわらず、常に目的を達成するための最短ルートを選ぶ。VMLの考え方は非常にシンプルだ。しかしこれが難しい企業も多いだろう。それがカルチャーとして定着してしまうVMLなのだから、採用ハードルは相当高いのではと感じるが、意外にも高度なスキルがあるかはそれほど重要でない。VMLに向いているのは好奇心が旺盛で対話好きな人物だと大石橋さんは話す。

大石橋:人とたくさん話すほうが、たくさん本を読むよりクリエイティブの本質に近づけると思うんです。画集を見る、アートに触れる、理論を学ぶというのはクリエイターとしての当たり前の素養。マーケティングにおいてのクリエイティブとは、コンシューマーの目に入った瞬間に終わりではありません。商品を買ってもらうのがゴールだとして、高額商品なら家族に相談するかもしれないし、ネットでレビューを調べるかもしれない。目にしてからの心の動きまで説明がつくようなものを作らなければいけない。その心の機微を理解するためには、外に出て遊んだり、人と話すことで、実際に心を動かされた体験がたくさんあった方がいいと思っています。

飯島:自分ができることだけを淡々とこなす会社ではないので、とりあえずやってみようと思いさえすれば、すごいスピードで成長していけます。何よりこれがやりたいという意志を持つことが大事です。みんな、それは必要なのか?とか、このやり方ではどうか?と意見は言うけれど、やりたいという気持ちを否定・批判はしません。

大石橋:VMLにいるのは、周りの目を気にすること無く自分の意見を言うメンバー。上司の顔色を見て仕事をするのではなく、もっと本質的な価値を生みたいと考えている人には向いていると思います。デジタル領域でずっとデザインをしてきた藤井と、リアルとマス広告を中心に経験した僕がクリエイティブを見ているので、もしアウトプットに足りないスキルがあっても、藤井と僕で補完できるし成長できると思います。それよりは、これまでどんなものに触れたか、何を見ているか、どんな意見を持っているかが大事です。好奇心とチャレンジ精神が旺盛な人は、慣れるのも馴染むのもはやいですよ。


取材を終えて

いくら「全員がフラットな組織」と言っても、大きなエージェンシーなど実際の社内には序列がある企業も多い。しかしVMLのインタビュー現場では、誰かへの遠慮はなく四者四様の意見が次々に飛び交い、言葉だけではないことが実感させられた。独自性あるプロフェッショナルたちが一枚岩でクライアントに向き合うVMLは、これからも日本のデジタルマーケティング界を動かしていくだろう。
取材・文:井澤 梓 撮影:ヒロセミサキ