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SPECIAL INTERVIEW VOL.9

デジタルからアナログまで、 感情を揺さぶるストーリーのあるクリエイティブ

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UNIEL ltd.

クライアントのブランディング課題に対し、多様なアウトプットで実績を築くUNIEL。彼らが何より大切にする「ストーリー」とは。

井の頭公園の自然を間近に感じる吉祥寺の閑静な住宅街。小さなカフェとともにオフィスを構えるUNIELは、デジタルとアナログによる両面からのアプローチでクライアントのブランディングを手掛けるクリエイティブデザインチームだ。2015年に設立されたばかりにも関わらず、これまでにWeb・紙・映像・空間など多様なアウトプットで実績を築いている。クライアントからの厚い信頼を得るために彼らが⾏っているのは、目に見えないものまでデザインするという「ストーリー」にもとづいた制作だ。人の感情を動かすためのその細やかな手法について、UNIELの代表でありアートディレクターの野田さんと、ディベロッパーの小見さんに話を聞いた。


感情に訴えるプロセスからデザインする

ブランディングとは、感情に訴えかけてブランドに価値のあるイメージを持たせるというある意味抽象的な行為だ。だからこそ、ユーザーの共感を得るために徹底的に作り込まれた「ストーリー」が欠かせない、と野田さんは語る。UNIELはクライアントのブランディング課題に対して明確なゴールを示し、綿密に練られたストラテジーをもとに感情を動かすクリエイティブの提供を行っている。デザインや演出の細部にまで意味があり、すべては言語化された資料として制作の中心に据えられていた。

野田:UNIELがブランディングで一番大切にしているのは「ストーリー」です。ユーザーの感情をクリエイティブでどう動かしていくのか、ゴールまでのストーリーを徹底的に作り込むようにしています。弊社が担当するのは、Webサイトだったり紙のカタログだったり、空間のプロデュースだったり、案件によって異なりますが、ユーザーはそれらの一部だけを見てブランドのイメージを持つわけではありません。そのため、どこでどう感情が動くか、ストーリー作りは依頼されている範囲に留まらず多方面に行います。できあがったストーリーをもとにクリエイティブでどうカタチにするのかを資料へ落とし込み、クライアントと共有します。これが固まるまでは制作に一切着手しません。

小見:野田は、資料の作り込みがものすごく丁寧です。どの案件もクリエイティブに対してだけで15ページ以上もの資料を用意しています。見切り発車は絶対にないので、制作に集中して取り組むことができますね。色々な制作現場に入りましたが、野田ほど資料を作り込む人を見たのは初めてです。

野田:ストーリーは、人の感情を動かすために必ず必要なもの。演出だけが派手でストーリーがない映画は見てもつまらないですよね。クリエイティブも同じで、見た目だけが綺麗でも心が動かせないと思うんです。

アートディレクター 野田 一輝さん
アートディレクター 野田 一輝さん

野田:以前、採用サイトを制作した際には、ストーリーを作り込むために、社長の方だけでなく同じ条件で入社した何名かの社員の方々にインタビューを行いました。採用サイトはただ作るだけになってしまうと、企業が伝えたいメッセージ一辺倒になってしまいます。でも、ゴールである採用に至るには、社長、社員、応募者など、様々な立場の人が関係してくるはず。人がどんな風に求人を見つけ、どう感じ、なぜ応募するのか。そして想いはどう届き、入社後の自分をどんな風に想像するか、この過程のストーリーは多くの人の声を聞き、企業を多面的に捉えないと作れません。そこまで動いてくれるのかと驚かれることも多いですが、クライアントの目指しているものを表現するためには、絶対に必要なフローだと思っています。

言われたものをただ作るのではなく、コンサルティング領域までクリエイティブでカバーするほど深掘りするUNIEL。ときにワークショップやインタビューなどを用い、ストーリー設計のために時間を費やすという。この手法を取るからこそ、できあがったクリエイティブはクライアントからの信頼も厚い。

野田:せっかくUNIELにお声がけくださったのですから、UNIELにしかできないことを提供したい。目指すゴールとUNIELができることを予め資料として明示することは、お客様の安心や信頼感につながっているのかなと感じます。そして自分たちにとっても、ブレない制作指針になっていますね。


UNIELでなければ実現できなかった

UNIELが手掛けた中には、他社がカタチにできなかった依頼もある。ブランドに新しいイメージを持たせるリブランディング案件では、徹底した現状分析をもとにしたストーリーでユーザーの持つブランドイメージを一新させた。

野田:「andu amet」というエチオピア発の高級レザーブランドのサイトデザイン案件では、ブランドの方向性を再設定し、リブランディングしたいというオーダーがございました。お客様の熱い想いを誤解なくサイトで表現したいと思い、ストーリー設計には多くの時間を割きましたね。

野田:クリエイティブ資料では、現状の把握や案件の目的にはじまり、先方の社員の方々へのインタビューや社内にある情報をもとに行ったSWOT分析の結果も含んでいます。メインターゲットからサブターゲットまでのペルソナを詳細に設定し、新しいブランドイメージを感じてもらうまでのストーリーを作り込みました。

ユーザーがブランドにどう触れるか、どんな感情を抱くか、感覚で話してしまいがちな部分も一つ一つ定義を言語化し、漠然とした言葉や単語を含まないストーリーを作ることで、アウトプットのイメージはクライアントのなかでも明瞭になる。そのため、クライアントとは要望の変更なども理由にもとづいてスムーズに話ができる関係性を築けるのだと言う。

野田:制作方針を定めるまでに出た変更点は ver.1、ver.2 と資料で変遷を残すようにしています。何故変更を加えたのか理由もしっかりと残すことで制作の過程で疑問が出ても立ち返ることができますし、関わる全員が納得した上で共通のゴールを目指すことができます。

小見:着手前の全員の認識が同じだから、制作途中で大幅に軌道修正するようなロスは起こらないですね。事前準備にかなり時間を割くことで、結果として制作期間の短縮に繋がっていると思います。

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野田:今後もお客様が必要とすればブランディングツールなどで携わる予定です。


これまでのナレッジはカタチある資産に

UNIELの制作の鍵となっている資料は、進行中の案件はもちろん過去の案件についても全てのものが残されてる。メンバーはいつでも資料に触れられるため、そこから学ぶことも多い。

小見:僕は入社してまだ3ヶ月ですが、これまでの案件についてすぐにキャッチアップができました。案件を成功させるためには、自分のポジションであるディベロッパーとしての目線以外でも、意見を出せるべきだと思うんです。クライアント、ユーザー、デザイナーという案件に関わる全ての人の視点が理解できる資料があるのはUNIELの資産だと感じます。

ディベロッパー 小見 祐介さん
ディベロッパー 小見 祐介さん

野田:記録に残すことで自分が安心するからというのも大きいけどね(笑)UNIELのナレッジも、仕事の進め方も資料に詰まっているから、これから入るメンバーにも見てもらいたいと思っています。

12月に公開された自社のコーポレートサイトも、クライアント案件と同様に伝えたいイメージからストーリーを組み立てて制作した。UNIELとは何者か、UNIELができることは何か、すべてが詰め込まれている。

野田:自社サイトはクライアントワークと違い、制約のない表現ができる場。そしてUNIELの名刺代わりになる大切な存在です。UNIELらしい表現と、そして最新の技術を多く取り入れています。ある意味ポートフォリオですね。

小見:コーポレートサイトの優先順位が低い制作会社もあるので、案件と同様のフローで作り込むのは珍しいかもしれません。でもこれまでの野田の仕事の進め方を知っていたから、相当気合が入ったものを作るんだろうなと思っていました。資料を読んですぐにコーディングを始められるくらい、作るものが明確でしたね。

UNIEL ltd.
UNIEL ltd.

実際にできあがったサイトは、モノクロを基調としたデザインに精巧なイラストと繊細な音楽が用いられ、動きのないエリアがみつけられないほどたくさんのアニメーション演出が仕掛けられていた。トップページの背景に見える小さなドットの流れは、ブラウザ上ではデジタルらしい見え方をするが、同じデザインを紙に印刷するとインクが滲んだようなアナログらしい質感になる。まさにデジタルとアナログの両分野で活躍するUNIELらしさがうかがえる。

野田:UNIELはWebだけでなく紙や空間など広範囲でクリエイティブを提案しています。だからコーポレートサイトもWebだけで映えるデザインだとUNIELらしくないなと。インタラクションなどの動作も自然上で起こるものかどうかを、紙で立体を作ったりして確認しました。「ここを上に動かすなら風はこっちから来るはずだよね…」みたいに(笑)

小見:身振り手振りを交えながら細かい動作も話し合いましたね。文字が風になびくように揺れるところや、アナログっぽい動きがたくさん入っているところが個人的にも気に入っています。サイト全体ではパフォーマンスを上げるためにWebGLを使用しました。トップページの下部には、サイトで流れているUNIELのオリジナルサウンドをWeb Audio APIで波形に表現したところや、いろいろな技術にチャレンジできたので、大変でしたが楽しかったです。

野田:小見はクリエイティブを理解して正確にアウトプットしてくれる、デザイナーにとって心強い存在のディベロッパーです。彼に頼んだおかげでUNIELのビジョンを体現したサイトができあがりました。UNIELの想い、UNIELらしさ、全てをコーポレートサイトに詰め込んでいます。これを見てUNIELに仕事を依頼してくださり、UNIELと仕事をしたいと思ってくだされば最高ですね。

今UNIELでは、ストーリーをともに表現していくデザイナーを募集している。案件数を増やすのではなく、もっと深掘りしていきたいと考えているそうだ。どのポジションでも、クライアントと直接対面して案件を進めることができるという環境には、大きなやりがいを感じられる。

野田:関わったお客様にはご満足いただいていると感じておりますが、もっともっと、やれることがあると思っています。一つ一つの案件を深く一緒に作り込んでいきたいですね。

小見:UNIELは少人数の組織なので、自分の裁量が大きくやりがいを感じます。案件の全体像を深く理解できるのも嬉しいです。同時に責任もありますが、だからこそ成長できる環境だと感じています。

野田:現在スキル面で不安があるのであればお教えするので、一年もあれば一通りできるようになるはずです。それよりは人生のストーリーを持っている人に来て欲しいですね。叶えたい目標がある人は全力でサポートします。少数精鋭の組織なので、互いにサポートしながら全員が満足できる仕事をしていきたいと思っています。


取材を終えて

UNIELのストーリー設計は、関わる人の“本気度”を高める。クライアントの課題解決のための妥協なき姿勢が、厚い信頼となって現れているのだろう。何よりもクライアントのために、本気になれる環境がここにはある。
取材・文:井澤 梓 撮影:川島 勇輝