
マーケティングリサーチとは?目的・メリット・手法を詳しく解説
- 更新日 : 2025/08/21


現代のビジネス環境は、顧客のニーズが多様化し、市場の変化も激しくなっています。このような状況で、企業が成功を収めるためには、客観的なデータに基づいた科学的なアプローチが不可欠です。
その中核を担うのが「マーケティングリサーチ」です。
本記事では、マーケティングリサーチの基本的な概念から、具体的なメリット、代表的な手法、そして実践的なプロセスまでを解説します。


マーケティングリサーチと市場調査の違い
マーケティング活動において、「マーケティングリサーチ」と「市場調査」はよく使われる言葉です。しかし、両者は厳密には異なる意味を持ちます。この違いを理解することは、適切な調査を企画し、ビジネス課題を解決するための第一歩です。
ここでは、それぞれの定義と役割の違いについて解説します。
マーケティングリサーチとは
マーケティングリサーチとは、企業のマーケティング活動全般に関わる意思決定を支援することです。具体的には、商品開発、価格設定、プロモーション、流通戦略などの一連の調査・分析活動を指します。
単に市場のデータを集めるだけではありません。集めたデータを分析し、課題解決のための具体的なアクションに繋げることまでを目的としています。
つまり、市場の事実だけでなく、その背景にある理由を探り、未来の戦略を導き出す、より広範で戦略的な活動と言えます。
市場調査とは
市場調査はマーケティングリサーチの一部であり、市場の規模や成長性、顧客層、競合の動向などを調べます。これは、「今」の市場環境や事実を客観的に把握することに主眼を置いた調査です。
例えば、「この市場の規模はどれくらいか?」「競合A社のシェアは何%か?」といった事実情報を収集する活動が市場調査にあたります。市場調査によって得られたデータは、マーケティングリサーチが戦略を立案するための重要な基礎情報となります。
マーケティングリサーチがもたらす3つの主要なメリット
時間とコストをかけてマーケティングリサーチを行うことには、どのような価値があるのでしょうか。データに基づいて戦略を立てると、企業は大きな利益を得られます。
ここでは、マーケティングリサーチがもたらす代表的な3つのメリットについて掘り下げていきます。
メリット1:的確な意思決定とビジネスリスクの軽減
マーケティングリサーチの最大のメリットは、客観的なデータに基づいて意思決定ができる点にあります。
例えば、新商品を開発する際に、「おそらく若者に受けるだろう」という感覚的な判断ではなく、具体的なデータに基づくことが重要です。
「20代の〇〇という層が、△△という機能に最も魅力を感じている」といった情報があれば、より確信を持って開発を進められます。
客観的なデータを参考にすれば、見当違いの製品を市場に出してしまうといった失敗のリスクを大幅に軽減できます。
メリット2:顧客の潜在ニーズを発見し、新たな機会を創出
顧客自身も気づいていないような「潜在的なニーズ」や「不満」を発見できることも、マーケティングリサーチの大きなメリットです。
アンケートで「今の製品に満足していますか?」と聞くだけでは、本当のニーズを捉えきれません。顧客の行動を観察したり、深掘りしたインタビューを行ったりすると、「もっとこうだったら良いのに」という本音が見えてきます。
こうしたインサイトは、画期的な新商品のアイデアや、既存サービスの改善に繋がり、新たなビジネスチャンスを創出します。
メリット3:説得力のある戦略立案と関係者との合意形成
企業のマーケティング戦略は、経営層や営業、開発など、多くの部署の協力があって初めて実行できます。マーケティングリサーチによって得られた客観的なデータは、戦略の妥当性を示す強力な根拠となります。
例えば、「ターゲット層の70%がこのコンセプトを支持しています」といった具体的な数値を示すと、関係者の納得を得やすくなります。
その結果、スムーズな合意形成につながり、全社一丸となってプロジェクトを推進することが可能になります。
マーケティングリサーチの代表的な手法一覧
マーケティングリサーチには、目的や明らかにしたいことに応じて、様々な手法が存在します。これらの手法は、大きく「定量調査」と「定性調査」の2つに分類されます。
調査の二大分類
定量調査は、数値や量でデータを把握するための調査です。「はい」「いいえ」で答えられる質問や、5段階評価などを通じて、多くの人から回答を集め、その結果を統計的に分析します。市場全体の傾向や割合(例:認知度、満足度)を把握するのに適しています。
定性調査は、数値では表しきれない、人々の行動の背景にある動機、意識、感情を深く理解するための調査です。インタビューなどを通じて、言葉や行動の「なぜ?」を掘り下げます。消費者のインサイト(深層心理)を発見するのに適しています。
定量調査の主な手法
定量調査をする際によく使われる手法を見てみましょう。
インターネット調査(Webアンケート)
Web上でアンケートを配信し、回答を収集する手法。短期間で多くのサンプルを集めやすく、コストも比較的低いのが特徴です。
会場調査
調査対象者に指定の会場へ来てもらい、製品の試用・試食や広告の評価などを行ってもらう手法。管理された環境で、正確な評価を得やすいのが特徴です。
ホームユーステスト
調査対象者に製品を自宅へ送付し、一定期間試用してもらった後にアンケートに回答してもらう手法。実際の生活環境での使用感を評価できます。
郵送調査
調査票を郵送し、回答を返送してもらう手法。インターネットを利用しない層などにもアプローチしやすいのが利点です。
定性調査の主な手法
続いて、定性調査をする際によく使われる手法を紹介します。
グループインタビュー
複数の対象者(4〜6名程度)を集め、座談会形式で特定のテーマについて話し合ってもらう手法。参加者同士の意見交換の中から、新たな発見やアイデアが生まれやすいのが特徴です。
デプスインタビュー
調査者と対象者が1対1で、1〜2時間かけてじっくりと話を聞く手法。他人の目を気にすることなく、プライベートな内容や本音を引き出しやすいのが特徴です。
行動観察調査(エスノグラフィー)
対象者の普段の生活や購買行動などを観察し、その背景にある無意識のニーズや課題を探る手法。言葉だけでは分からない、リアルな実態を把握できます。
マーケティングリサーチの実践7ステップ
効果的なマーケティングリサーチを実施するためには、体系的なプロセスに沿って進めることが重要です。ここでは、リサーチを企画し、実行、活用するまでの一連の流れを7つのステップに分けて解説します。
Step1:マーケティング課題の明確化とリサーチ目的の設定
最初に行うべきは、「なぜリサーチを行うのか?」を明確にすることです。
まず、「新商品の売上が伸び悩んでいる」「若者向けのプロモーションを企画したいが、何が響くかわからない」といったビジネス上の課題を特定します。そして、課題解決のために、「リサーチによって何を明らかにしたいのか」という目的を具体的に設定します。
Step2:調査企画の立案と仮説構築
リサーチ目的が定まったら、「おそらく〇〇という理由で売上が伸び悩んでいるのではないか?」といった仮説を立てます。この仮説を検証するためには、どのような調査を行うべきか、具体的な企画を立案します。
企画の段階で、調査によって得たい情報のイメージを具体的にしておくことが重要です。
Step3:調査手法と対象者の選定
Step2で立てた仮説を検証するために、最も適した調査手法(定量調査か定性調査か、具体的な手法は何か)を選びます。同時に、誰に話を聞くべきか(性別、年齢、ライフスタイルなど)という調査対象者の条件を具体的に定義し、選定します。
Step4:調査票の設計と実査(フィールドワーク)
選定した手法に合わせて、質問項目をまとめた「調査票」(アンケート票やインタビューガイド)を作成します。質問の順序や聞き方ひとつで回答の質が変わるため、バイアスがかからないように注意深く設計しましょう。
調査票が完成したら、実際に調査対象者からデータを収集する「実査」を行います。
Step5:データの集計・分析
実査で収集したデータを集計し、分析します。
定量調査の場合は、グラフ作成や統計解析(クロス集計など)を行い、全体の傾向を把握します。定性調査の場合は、発言録を読み解き、共通する意見や注目すべきインサイトを抽出します。
Step6:分析結果のレポーティングと共有
分析から得られた結果と、そこから導き出される考察や戦略への提言を報告書にまとめます。単なるデータの羅列ではなく、「この結果から何が言えるのか」「次に何をすべきか」が明確に伝わるように、ストーリー立てて構成することが重要です。
作成したレポートを関係者と共有し、次のアクションに繋げます。
Step7:振り返り
リサーチプロジェクトが完了したら、一連のプロセスを振り返ります。具体的には、以下のようなポイントを確認・評価してみましょう。
・目的は達成できたか
・手法や対象者の選定は適切だったか
・得られた結果は有効に活用されたか
振り返りを通じて、次回の調査をより良くするための知見を蓄積します。
マーケティングリサーチの活用シーン
マーケティングリサーチは、企業の様々な活動場面で活用できます。ここでは、具体的な活用シーンを3つ紹介し、リサーチがどのようにビジネスに貢献するのかを見ていきましょう。
新商品・サービスの開発プロセスにおける活用
新商品開発は、マーケティングリサーチが最も活躍するシーンの一つです。
開発初期には、「市場機会の探索」や「ターゲット顧客のニーズ把握」を行います。次に、コンセプト段階で「コンセプト受容性評価」、試作品完成後は「製品テスト」を実施します。
さらに、発売前には「需要予測」や「最適な価格設定」を行い、各フェーズでリサーチを活用することで、成功確率の高い商品開発を実現します。
既存商品の売上向上や顧客満足度改善
既存商品の売上が伸び悩んでいる場合、その原因を特定するためにリサーチが役立ちます。「顧客満足度調査」で製品やサービスの課題を洗い出したり、「ブランドイメージ調査」で競合との立ち位置を確認したりします。
また、自社の顧客が誰で、なぜ自社を選んでくれているのかを深く理解する「顧客理解調査」は、ロイヤルティを高める施策に繋がります。
効果的な広告クリエイティブやプロモーションの策定
広告やプロモーションを成功させるには、ターゲットに的確にメッセージを届ける必要があります。「広告クリエイティブ評価調査」では、複数の広告案を事前にターゲットに見せ、最も効果的な案を選び出すことができます。
キャンペーン実施後には、「広告効果測定調査」を行いましょう。認知度や理解度がどの程度向上したかを測定し、次回のプロモーション活動の改善に役立てます。
まとめ
本記事では、マーケティングリサーチの基本的な考え方から、具体的なメリット、手法、実践プロセスまでを解説しました。
マーケティングリサーチは、単なるデータ収集ではありません。顧客を深く理解し、ビジネス上の意思決定の精度を高め、リスクを軽減するための強力な武器です。
勘や経験も重要ですが、それに客観的なデータを掛け合わせることで、マーケティング戦略はより強固なものになります。この記事を参考に、ぜひマーケティングリサーチをご自身の仕事にも活用してみてください。
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